B級映画 『ヒドゥン』のススメ

ヒドゥン ENTERTAINMENT COLLECTION SILVER [DVD]

急に見たくなったので、借りてきました。20年前の作品ですが、おおお…やっぱりおもしろい！B級映画とはかくあるべし！カーチェイス、女、ドラッグ、爆発炎上＆宇宙人！ありきたりな材料なのに、ここまでおもしろいのは、キャスティングの良さとスピード感あふれるストーリー展開があったからこそ。『ターミネーター』が好きな人は、きっとこの映画のことも好きなはず。

さて。顔が整いすぎて逆に変なカイル・マクラクランは、外側は人間なんだけど、中身は宇宙人のFBIエージェント、ロイド・ギャラガー役。殺された妻と娘、そしてパートナーの復讐を遂げるため、次々に人間に寄生する敵を追う。カイルは当時、紅顔の美青年だったなー♪えーと、なになに、今は…なにぃ、48歳だとぅ！？うん、もうさすがに紅顔の美青年じゃない。映画『ロズウェル』（←カイル主演の映画。最近のTVシリーズに非ず）で老人メイクをしていたカイルですが、あーんな感じにだんだん近づいてきている感じ。だいぶシワも寄り、白髪にもなってますが、爽やかさに変化は見られません。きっとおじいちゃんになっても爽やかでしょう。

おっと話が脱線。中身が宇宙人のロイド君は、真剣に敵を追うのですが、ところどころ宇宙人ぽさを露出してしまい、無表情なのに笑いを誘います。

例えば、相棒のベック宅での食事シーン。まず、食器の使い方が変。ビールを飲んで泥酔。アルカセルツァー（発泡薬）を水に入れずにかじってしまう。いちいち挙動不審で、ベック夫妻を凍りつかせるロイド君の行動は、かなり笑える。ロイド君がまったくの無表情なので、よけいにおかしい。ほんの一瞬、モグモグと口を動かしながらロイド君がニコッとベックに笑いかけるシーンがあるのですが、思いがけないできごとに戸惑うベックの顔が見ものです。

この後、二日酔いを心配したベックからロイド君にアスピリンの差し入れがあるのですが、ロイド君はさっき薬を飲むことを学んだばかり。アスピリンをコップの中にポトンと落として「じぃーっ」と眺め、薬を持ってきてくれた刑事を凍りつかせてしまいます。「アワが出ない…」と言わんばかりにコップを眺めるロイド君。そのうちにコップの底でアスピリンが溶けてしまって飲めなくなり、すごく困ってしまうのです。うぅ、愛しい（笑）個人的にはここのシーンが一番好きかも。

無表情なのにコミカルな演技を見せるのとは裏腹に、敵を追い詰めていくときの非情さはクールで素敵。まばたきもせず、敵に向かってまっすぐに歩きながら銃を撃つ彼の非地球人的演技は見ものです。また、追い詰めたはずの敵に、あと一歩のところで逃げられてしまい、道端に座り込んでしまうシーンは、ロイド君が初めて見せる激しい感情の表れで、心を揺さぶられます。

ロイド君が敵を倒すクライマックスシーンでは、妻子や相棒の復讐もそこそこに、ベックの復讐である感が強く、それまでひたすら無表情だった彼に変化が生まれます。ここは手に汗握りつつ「がんばれロイド君！」と声をかけてあげたくなるシーン。ここで取り出す武器が火炎放射器（物語の中盤で警察に押収されたやつ）！えーっ！？だったら最終対決まで待たずにもうちょっと前からそれで敵を狙えば良かったじゃん、という話ですが、そこはほら、B級映画だから優しい目で見ないと。

で、ラストシーン。ロイド君（の中身）はベックに乗り移ります。彼の口からはニョルニョル出てくるものはありませんが、彼もやはり寄生性宇宙人。彼はベックの小さな娘を悲しませたくないという一心でそうするのですが、殺されてしまった自分の娘への愛というものが伏線になっていることは言うまでもありません。生き返ったベックを不思議そうな目で見つめる娘。彼女は父親の中身がいつの間にかロイド君になっていることに感づくのですよね。恐るべし子供の直感！これ以降ロイド君（の中身）はベックとして生きていくことになるのですね。かつて失った妻と娘との生活を再び手にしたロイド君（の中身）が、敏腕刑事のベックとして、また普通の人間らしく生活できるかものすごく不安（笑）の残るラストシーンです。

トリビアとしては、『ツイン・ピークス』でハンク・ジェニングスを演じたクリス・マルキーが敵に乗り移られた男の役で出てきます。映画の冒頭で、ロサンゼルスのダウンタウンを舞台にカーチェイスを繰り広げるおいしい役ですが、口からニョルニョルと宇宙人（の中身）が出てくる気持ち悪い役でもあります。食べてるときは見ないほうが吉。

B級映画の大傑作『ヒドゥン』、おすすめします！ネタは全部バラししちゃったけどね！てへっ。

もし『ヒドゥン』が気に入ったら、似たような作品で『ボディ・スナッチャーズ』もお試しあれ。こちらもおすすめ。メグ・ティリーの指差し確認＆「ギャーっ！！」が忘れられない怖さです。ガブリエル・アンウォーが可愛いので、それ目当てで見てもいいのではないかと。

ボディ・スナッチャーズ [DVD]