染五郎が良い。

阿修羅城の瞳 [DVD]

阿修羅城の瞳 [DVD]

昨夜レンタルした『阿修羅城の瞳』の映画版を見ました。豪華絢爛のラブストーリーでした。以前はあまり好きじゃなかったのです。染ちゃんのこと。昔、古田新太主演の『アカドクロ』と市川染五郎主演の『アオドクロ』のどっちを見に行こうと考えたとき、『アカドクロ』をとったくらいです。でも歌舞伎を見るようになったころから、なんかジワジワと好きになってきちゃったのです。

佐藤浩市なんかもそうだったんですが、30代も半ばになって20代のころのギラギラした脂気が抜けたら、粋な男の色気が出てきて「たまらん」雰囲気が出てきたんですよねえ。

なんで好きになっちゃったんだろうなーとずっと思っていたのですが、今日、この映画を見てハッと気づきました。市川雷蔵に似てるんです。まず、演技の幅の広さが似ている。現代劇も時代劇も違和感なくいける。殺陣の華麗さも良く似ている。舞踊で鍛えているせいか、下半身が据わっていて、ブレがなく、刀がきちんと止まる。これがとても美しい。さらに、キザな決めセリフを潔くキザに言えるところも似ている。艶っぽくてモテモテなのに案外純情でストイックな男を演じられるところも。

で、これに気づいたシーンというのが、とっても私らしいのです。殺陣のシーンで、染ちゃんの着流しの裾がガバーッと開いたときに、下帯がチラッと見えたんですよねー。そこでピーンときました。「雷蔵様に似ているんだ!」と。相変わらず腐ってるなーあたしの目…。『阿修羅城の瞳』は殺陣のシーンがとても多い。かつての大映のチャンバラ映画並みです。だからこそ気づいたのでしょう。

ひととおり映画を見たあと、コメンタリーで本編を見直したら、滝田監督が最後の方で「こういう演技ができる役者は市川雷蔵以来」ってコメントをしていてびっくり。「をー!!監督もそー思いますか!アタシも(さっきから)そー思ってましたよ!」って握手を求めたい気分になりました。

コメンタリーって普段あんまり見ないんだけど、これは見てよかった。あちこちにマニアックなツボが隠されていることがわかったから。衣装に歌舞伎の『鷺娘』や『弁天小僧』のものを使っていたり、染ちゃんが舟の上で歌っている小唄は、染ちゃんのおばあちゃまが作ったものだったりといった裏話が満載でした。

裏話といえば、1月の終わりに松本幸四郎NHKの朝の番組に出ていたとき、染ちゃんの子どものころの話をしていました。非常に興味深い内容だったので、かいつまんでメモしておきます。幸四郎は唄も踊りも大嫌いな子どもだったのに、染ちゃんはどちらも大好きで大好きで、放っておくといつまでもやっていたこと。「幼稚園のお遊戯なんかバカバカしくてやってられるか」と思っていたらしく、さっさと帰ってきてはお稽古をしていたこと。幼稚園の発表会で、『アリババと40人の盗賊』をやったとき、“当然”自分が主役に選ばれると思っていたのに、盗賊の1人に配役されてくやしがったこと。よほどくやしかったらしく、発表会の当日、アリババに殺されるシーンを歌舞伎風に延々と演じ、くるくる回りながら七転八倒、なかなか死ななかったこと。おもしろい子どもだったんですね。染ちゃん。

と、全然映画の感想になってませんが、伝法な口調でばっさばっさと鬼を斬り、惚れこんだ女には一直線の病葉出門を演じた染ちゃん、とてもかっこよかったです。『阿修羅城の瞳』、舞台版のDVDも見てみたいなぁ。やっぱり時代モノはヒーローがかっこよくてナンボだなと思った次第です。

あ、今日は歌舞伎座で染ちゃんの息子の斎ちゃんが豆まきをしたみたいですよ。斎ちゃんの初舞台の様子は先日のNHKの番組で幸四郎が紹介してました。飛び六方やっててかわいかった。きちんと見得も切ってたし。ハハハ。血筋ですなぁ。今後も染ちゃん一家に大注目です。