チャン・チェンの匂い

張震チャン・チェン)が見たかったので『呉清源 極みの棋譜』を見てきました。最初から最後まで、美しい彼の雰囲気を楽しむといった趣の作品でした。

昭和の碁聖呉清源の孤独な棋士道。勝負の世界に生きる男のストイックさと紙一重の幼さが微妙な艶となって作品全体を包んでいたように思いました。

囲碁と、自分は何のために生まれてきたんだろうという人生のテーマを一途に追い求める呉清源。恩師に先立たれ、子どものように泣く姿。空襲で荒れた家から家財道具を持ち出そうとする妻をよそに、ボーっと棋譜について考えている姿。対局中に、敬愛する兄弟子が鼻血を出して倒れようとも碁盤だけを見、天井を見て次の手を考えている姿。勝負の世界が辛すぎて、日本における自分の立場があまりに孤独で、思わず新興宗教に走ってしまう姿。けれど時が過ぎてしまえば、彼にはいつだって碁盤しか見えていなかったことがわかる。

本作はエンターテインメントとしてのストーリー映画ではなく、呉清源の、その時々の心理状態を描いたビジュアル映画。だから『華様年華』のような映画が苦手な人は全くと言って楽しめないと思う。目の前で繰り広げられる映像美に対してうっとりするくらい無防備な気持ちで見ないと。

思えば『カップルズ』を見たのは11年前。学生時代、ちょうど夏休みで帰国していたときのことです。で、チャン・チェンに釘付け(笑)なんてステキな男の子なんだろう!というのが第一印象でした。スカッとした男前なビジュアル、冷たいような、乾いてるような、一種投げやりなまなざしでさえ爽やかだったのです。また名前がいいじゃないですか。震、だなんて。アタシのハートが震えたっつーの。

「次はどんな映画に出るのかなー、フンフンフン♪」などと思っていたら、彼は『カップルズ』に出演したあと、潔く兵役に行ってしまい、私をガックリさせたのでした。その後しばらくまたアメリカにいたのでアジア映画から遠ざかっていたのですが、その後『グリーン・デスティニー』だの『2046』だの、話題作にガンガン出るようになって「おお、ウェルカムバック!」と思っていたのでした。

で、本作。素敵で可愛かったですよ…相変わらず。羽織袴がよく似合っていたのよねー。正座するときの羽織の裾のさばき方が美しかったのよねー。太い首がセクシーなのよねー。ぼーっと天井を見ていても可愛いのよねー。ほっそりした頬にめちゃくちゃデカい手を当てて「ほぅ」とため息を吐くとこもセクシーだったのよねー。腕を振らないで「テケッ。テケテケ、テケテケッ」って歩くとこもめちゃくちゃ可愛かったのよねー。赤いマフラーがお似合いだったのよねー。碁盤に碁石を置くとき、指が長くてとってもいやらしかったのよねー。産まれたばかりの息子のほっぺを触るとき、外を歩いてきて手が冷たかったものだから、手を息であたためて、さらに手のひらをこすり合わせてあたたかーくしてからほっぺをチョン、ってつつくシーンも妙にいやらしかったのよねー。子どもの誕生を祝ってもらい、羽織袴姿で中国流に謝意を表す(右手の拳を左手で包むやつ)シーンも、とってもほほえましかったのよねー。あーっ!!!キリがない!

私の好きなにおいのひとつに「墨汁のにおい」があるんですよ。湿っているのに乾いてて、清潔すぎてエロいにおい(笑)私のチャン・チェンに対するイメージって、その墨汁のにおいなんですよねぇ。彼も30歳を過ぎて、『カップルズ』の頃のような脂の乗った若者ではなくなりましたので、余計に墨汁のにおいがします。くんくんくん…。ええにおいやぁー(変態かアタシは…)。

私の好きなもうひとりの中国人俳優、ダニエル・ウー呉彦祖)。彼とチャン・チェンの夢のよーな共演作品『天堂口』。まだ見てないんですけどね。香港映画祭見逃したから。あー…二人が一緒に映ってる画面を想像しただけで美しすぎて鼻血が出そう。ちょっと雰囲気も顔つきも似ている二人なので、彼らを知らない方々にはちょっと判別しにくいかもですよ。

こっちがチャン・チェンhttp://www.bloodbrothersthemovie.com/tmp2/en/img/b/s10.jpg
こっちがダニエル・ウーhttp://www.bloodbrothersthemovie.com/tmp2/en/img/b/s18.jpg

どっちもアタシが太鼓判を押すオトコマエです。あぁ、ほんとにオトコマエだ。ウットリ。

来週から中国映画祭が始まります。23日にはダニエルが舞台挨拶をするそうなので楽しみだわ♪1年ぶりの再会です。『天堂口』も早く見たいな。

■『呉清源 極みの棋譜』公式サイト:http://www.go-movie.jp/
■『天堂口』公式サイト:http://www.bloodbrothersthemovie.com/