曽根崎心中

新文芸座でATG特集。増村保造の『曽根崎心中』を観る。主演が宇崎竜童、梶芽衣子。徳兵衛とお初のベタな恋愛物語。

自分の恋愛に酔っているとき、人間は周りが全く見えないものだということがよく表現されていたように思う。この映画の視点は徳兵衛とお初から見た世界。そして、江戸時代の日本人の建て前感が圧巻。「それでは俺の男が立たぬ」「そうまで言われちゃ俺の男がすたる」「これは女の意地じゃ」といった台詞の数々が、日本人の体裁主義を皮肉ってもいるんだろうかと思ったり。体裁が悪いから死ぬ、というのは安直かつ非論理的で野蛮な行動だと思うけど、当時はそうでもしなければ身の潔白が証明できなかったわけで。

宇崎竜童のへったくそな演技が、この映画にはものすごくぴったりでした。というのも、実直で嘘がつけない、不器用な徳兵衛という人物の一途さがこの物語には重要だったから。梶芽衣子のまばたきしない演技も迫力満点。彼女の濃ゆい演技は、宇崎竜童の台詞の棒読みによって引き立てられており、二人の演技の濃淡がこの映画のキーだったように思う。いろいろ余計なシーンがあったことも否めなかったけれど、私はすごく楽しめた。まー、あれですね、心中モノは楽しいです。『ロミオとジュリエット』然り。周りが見えていないカップルというものは、外から見るととても滑稽なので、ある意味心中モノはコメディであると私は個人的に思ってます。ものの見方がひねくれてるのは十分承知の上です。

この映画を一言で表現するなら「ロッキンロール時代劇」です。実に破天荒である反面、ベタな主人公二人とベタな悪役、全てがお約束。大映ドラマ時代の増村節が炸裂している作品でした。音楽もダウンタウンブギウギバンドだったし。ああ、楽しかったー♪こういうB級映画大好き!!多分、みうらじゅんもこの映画が好きだろうと思う。

mikiさんとららさんと合流。世界の山ちゃんで飲もうと思ったら、混んでいたので断念。mikiさんの提案で焼きとん(←ブタさんの串焼き・初体験)屋さんへ。飲んで食う。気分は新橋ガード下。ららさんも私も大好きだ、こういうトコ(笑)でも女の子だけでは入りにくいのでmikiさんがいてくれてラッキー♪飲んで食って、例のごとく映画について語る大会。スタバに移動してまたもや2時間くらい今年のワースト映画、ベスト映画について語ったり、タルコフスキーの話になったり、手塚治虫の話になったり。濃ゆい話になる。しかしお二人ともよくご存知である、いろいろなこと。いったいどんな知識が詰まっているのか。お会いする度に毎回楽しい時間を過ごさせていただいている。次回も楽しみ楽しみ♪

私はファンタジーが理解できない類の人間なので、残念なことに指輪物語とかナルニア国がどうだとかサッパリわからないのですが、キッチュなおとぎ話が大好き人間らしいことがわかりました。お二人に、私がティム・バートンについて実に暑苦しい熱弁を振るっていた時(彼の世界観の何もかもが好き)、そう悟りました。長くなるので割愛しますが、帰りがけにDVDレンタル屋に寄り、『シザーハンズ』と『エド・ウッド』を借りました。(他の作品は借りられちゃってた。)TSUTAYAに行けば品数があるのはわかってるんですが、高いんだもん。滅多に行きません。というわけで今週末はティム・バートン・リスペクトです。

と思ったのに、つい藤田敏八監督の『バージンブルース』も借りてしまった…。あいかわらず自分の趣味がわからない。