『さらば、わが愛 覇王別姫』

絶賛食べかけ中。

かつらっちとランチ。隣り合わせのレストランのどっちに入ろうか迷ったのでジャンケンで決定。若鶏のソテーをオーダー。むっ!美味い!しかし濃ゆい味付けだ。ワインが欲しいぜ。「…いいよね?」「…金曜日だしね」と、どちらからともなく悪魔のささやきに負けて昼間からグラスワインをオーダー。その前に周囲に会社の人がいないかどうかチェック。ランチとは思えない充実した時間を過ごしました。いやー、あのレストランいいわ。また行こうね!


さらば、わが愛?覇王別姫 [DVD]レスリー・チャンの『さらば、わが愛 覇王別姫』観賞。レイトショーだけの上映で3時間近い上映ということもあり、かなーりキツい観賞条件だった。劇場ロビーには、レスリーの熱烈なファンとおぼしき女性の姿ばかり。

冷酷かつ残酷な生い立ち+めくるめく三角関係と愛憎劇+歴史の奔流+裏切りvs.裏切られの連続で、重苦しいストーリー。蝶衣(レスリー・チャン)は兄弟子の小楼(チャン・フォン・イー)と京劇のコンビを組んでいる女形。彼らの当たり演目は『覇王別姫』彼は、子供の頃からなにかと自分を庇ってくれた小楼のことが好き。でも小楼は女郎の菊仙(コン・リー)と結婚してしまう。蝶衣と小楼の間に亀裂が生じる。奇妙な三角関係の始まり。嫉妬、誤解、麻薬、再会、和解。歴史の流れに翻弄され、三角関係はますます複雑に絡み合っていく。そして運命の文化大革命。芸術は弾圧され、京劇もその例外ではなく、裏切りが裏切りを呼んで、菊仙は自殺を遂げる。怒り狂う小楼が蝶衣につかみかかる。11年後。小楼と蝶衣は再会、再び『覇王別姫』の舞台を共にする…のだが。


覇王別姫』はもともと項羽と劉邦という傑出した2武将の物語。友情と裏切りと死の物語。蝶衣も小楼との友情、裏切りを経て死を選ぶ。レスリー・チャンもまた、恋人との別れを経て死を選んだ。この映画にレスリー・チャンの人生を重ねるファンも多いのだろう。上映中、始終すすり泣きが聞えていた。(←正直なところ、かなりうざったかった。)

人間、究極の選択をしなければならない時には自らの命とひきかえに友人でさえ売るということを、容赦なく描写したチェン・カイコー監督。ある意味スゴイ。劇中で最も印象的なのは、3人が互いを告発しまくる場面。毛沢東に心酔する紅衛兵たちの狂信的な集団暴力行動の端々に、天安門事件や抗日運動に通じるものを感じた。

菊仙役、コン・リーの力強さとしたたかさには舌を巻かされた。なんてふてぶてしい女なのだろうと腹立たしく思っていたところを、阿片中毒の禁断症状に苦しむ蝶衣を介抱する彼女にしてやられた。遠い昔に自分を捨てた母親を想って「お母さん」とうわ言で繰り返す蝶衣。それを哀れに思ったのか、流産してしまった我が子を想ってか、夢中で蝶衣を抱きしめる菊仙。ひとりの男を巡って対立しているはずの二人が、いつしか互いの支えになっていたという重要なシーン。この映画で最も心を動かされたのはこの場面だった。

1時過ぎに帰宅。蝶衣のキンキンした歌声が耳から離れず、眠いのに眠れないというオチ。