痛い。

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~ この本にはたった1枚の挿絵しか入っていない。それも他では見たこともない、リリーさんの絵だ。これがリリーさんの絵?っていう絵。無数のチューブにつながれたリリーさんのオカンの姿。

去年、父が病気になって手術した時、もしかして親をなくすかもしれないという事実が怖くて怖くて夜も眠れない日が続いたことを思い出した。昼間、仕事をしていても手が震えてまるで仕事にならなかった。

食い道楽で酒が好きで、パンパンに太っていた父が15キロ以上痩せた姿を直視できなくて、入院中、父の病室でかなり素っ気無く振舞った自分を思い出した。リリーさんがオカンにしたように、優しく接することはできなかった。幸い、うちの父はわりと健やかに日々過ごせるまでに回復して、現在に至る。

はてなダイアリーのキーワードを辿って、この本についての書評をや感想文を読むと「泣ける」とか「感動した」とか書かれている。でも、私は怖かった。怖くてたまらなくなった。

だって、うちの父もリリーさんのオカンと同じになっていたかもしれなかったのだ。もしかすると、これから同じことが起こるのかもしれない。あの病気は再発との我慢比べ。リリーさんのオカンは私の母と同じ病院で同じ病気の手術を受けて、父と同じ病気で亡くなった。

つい最近のこと、友人と飲みに行った。彼のお父様は私の父と同じ病気で数年前に亡くなっている。うちの父が入院することになった時「気をしっかり持て」と、たった9文字のメールをくれた。その9文字が、どれほど私を支えてくれたか、とても言い尽くせない。飲みながら、彼は「親が死ぬと、どんなことをしても二度と埋められない大きな穴が自分の中に空いちまうんだよ」と言った。私は「ふうん、そういうものなんだ?」みたいな要領を得ない返事をしたように思う。今思えば、もっと他に言いようがあったろうにと思う。でも私は多分怖かったのだと思う。いつか自分の中に二度と埋められない大きな穴があく日が、必ず来るのだということが怖くて「へえ、そういうものなの?」って、曖昧な言葉でにごしてしまいたかったんだと思う。

今、咽喉に何かが詰まってるみたいに苦しくて痛い。多分、二度と読めない。