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[news]自決を予告?三島由紀夫の映画「憂國」フィルム発見

作家・三島由紀夫(1925〜70)が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で行った割腹自殺を、自ら予告するように監督・主演していた映画「憂國」(66年公開)のネガフィルムが、東京・大田区の三島邸で発見され、18日までにDVD化を含む公開が決まった。

氏の死後、瑤子(ようこ)夫人の強い希望で全巻焼却処分されたと公表されていた“幻のフィルム”の発見に、映画評論家の佐藤忠男氏(74)は、「割腹を明らかに予告した作品。どこまで芝居でどこから本気だったのか。三島という謎を解く鍵になる。公開されれば大きな反響を呼ぶだろう」と話している。

発見されたのは35ミリフィルム約40巻。気密性の高い大型の茶箱をテープで密封し、自邸倉庫奥にしまわれていたのを、製作時プロデューサーを務めた藤井浩明氏(78)が発見、内容確認した。傷やカビからも免れ、完璧(かんぺき)な状態であるという。

「憂國」は61年に発表された同名小説を三島氏が脚本、製作、監督、主役まで務めた30分の短編モノクロ映画。セリフは一切なく、字幕とワーグナーの音楽が流れる能舞台のような場景の中、2・26事件に参加できなかった中尉が妻の目前で切腹し、妻も後を追う。
(読売新聞) - 8月19日 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050819-00000401-yom-soci

うっわー…。ついに発見されたんだあ、『憂国』!観たい…ような気がするけど、切腹シーンで腸がかなりはみでてるってゆー噂なので、観たくない気もする。どうでもいいんですが、『憂国』を軍国主義にまみれた小説だとカンチガイしている人が世の中には多いみたい。純愛ラブラブ小説なのに。

たしかに2・26事件をモチーフにはしているけど、でも、そんなの小説の背景を彩っているだけで、中身は武山中尉と新妻の麗子のラブストーリーに他ならないんですよ。切腹も、そのラブシーンの一部に過ぎないと思います。

例えばね。一部引用ね。

麗子の体は白く厳かで、盛りあがった乳房は、いかにも力強い拒否の潔らかさを示しながら、一旦受け容れたあとでは、それが時の温かさを湛へた。かれらは床の中でも恐ろしいほど、厳粛なほどまじめだつた。おひおひ烈しくなる狂態のさなかでもまじめだつた。

麗子の目すこしもたじろがなかつた。そのつぶらな目は強い鈴の音のやうな張りを示していた。そしてかう言つた。

「覚悟はしてをりました。お供をさせていただきたうございます」

中尉はほとんどその目の力に圧せられるやうな気がした。言葉は虚言のやうにすらすらと出て、どうしてこんな重大な承諾がかるがるしい表現をとるのかわからなかつた。

「ここへ来い」

と中尉は言つた。麗子は良人のかたはらへ行つて、斜めに抱かれた。その胸ははげしく浪打ち、悲しみの情緒と喜悦とが、強い避けをまぜたやうになつた。(中略)中尉は思はずその唇に接吻した。やがて気がつくと、頭はすこしも醜さに歪んではゐないのに、閉ざされた目の長い睫毛のかげから、涙の滴が次々と溢れ出て眼尻から光つて流れた。

ね?ラブ小説でしょ?しかし映画の切腹シーンがあまりにリアルだということで有名になってしまった小説なのでいわゆるRight Wing映画だと思われているんじゃないかと。

ところでですね。ニュース中でコメントしている評論家の意見には、私、猛反対です。特にここ、「割腹を明らかに予告した作品」ってとこ。それは違う!と言いたい。じゃあ根拠は何だよって聞かれそうですが、私的には、多分みっしーは「大好きな2・26事件をモチーフに、これまた大好きな陸軍コスプレで、切腹シーンを自分で演じたかった」ってそれだけの話だと思います。だって、彼らの世代は「死ぬことは美しいこと」だっていう時代に生まれて洗脳されて育った世代なんだもん。現代人の私たちには「死ぬことはちっとも美しくない」けど、みっしーは大正生まれだもん。ズバリ軍国少年世代だもん。「将来は何になりたいですか」って聞かれたら「軍人になって御国のために死ぬのが夢です!」っていうのが少年の憧れだった時代の人だもん。しかもみっしーはおばあちゃまの影響でハードコアな歌舞伎ファンだったから、「愛のためなら死ぬ or 死ねる or むしろ死んでやる」って近松的心中モノが大好きな人なんだもん。そりゃ『憂国』みたいな作品書くでしょう。

というわけで、「割腹を明らかに予告した作品」というのはカンチガイだと思います。で、私は『憂国』という作品をラブストーリーとして愛している三島ファンのひとりです。

憂国』の初版映画本、高くて買えなかった苦い思い出が。たしか25万くらいだった。