金返せ!

■本:やまだないと総特集/ やまだないと
■出版:文藝別冊・河出書房新社

1200円返してくれ。なんか今日は電車の中で本を読んで帰りたい気分だったので本屋に寄った。で、やまだないとの文藝別冊を購入した。「家族生活」とゆー未完の作品を一挙にまとめた形で、あとは作者インタビューとか、トリビュートなんかがちょろちょろっと入っていた。

やまだないとという人の作品を読んだことがなかったので前知識は何もなく、それなのに岡崎京子の本の隣にあっただけで「もしかして、おもしろいかも」と思ったんだけどダメだ。実をいうと岡崎京子もあんまり好きではない。10代の頃、リアルな裸を描く人だなあと思ったけど、20代になってから「人間だれしも漫画みたいにきれーな裸を持ってるわけじゃないんだな」ということに気付いてからはどうでもよくなった。俗に言う「おしゃれな恋愛」とか「いい女といい男」とか、そういう系統の漫画がどうでもよくなった。だから岡崎京子やまだないとも、桜沢エリカも、もう読まない。いや、あたしの神経が受け付けない。大体、おしゃれできれいな恋愛なんてあるのか?甚だ疑問だ。そりゃアンタがそういう恋愛をしてこなかっただけの話でしょ、と言われればそうなんだけれども。

おっと。別にこの「家族生活」という話はそんなナマっちょろい話ではない。なんか生きる気力とかそういうものをまるで感じない。感じさせないのが目的だったのなら、大成功。ある意味ものすごい傑作なのかもしれない。でもさ。やっぱりアタシ、好きじゃない。この手のマンガは。


■本:ファンシィダンス/ 岡野玲子
■出版:小学館

岡野玲子はいい。陰陽師を読んだのがきっかけで岡野玲子の作品をダダーっと読み始めたのが5年前だったか。昨夜は半身浴しながら鼻血出る寸前までグイグイ読んでしまった。何回読んでもおもしろい。

寺の跡継ぎヨーヘー君と真朱(まそほ)さんを中心に、「あ・かるい」友人たちと煩悩、仏教世界(!!)を描いた80年代漫画。その昔、本木雅弘が主演で映画化もされたのでタイトルを知っている人も多いかと思う。

岡野玲子のいいところ。視点が実に客観的。自分の生み出すキャラクターに愛情はないのか、この人は!というくらい突き放した視線で物語が進む。この漫画は1巻と最終巻のみヨーヘー君の娑婆での生活が描かれているものの、あとは全部お山(雲水としての修行生活)がつづられている。煩悩に身を焦がしつつ、時に真朱さんのことさえ記憶の彼方に追いやって無我の境地に浸ってしまうヨーヘー君。

ヨーヘー君も真朱さんも、見栄っ張りですっっごい不器用で、全然仲が進行しない。結局最後の最後まで彼らは何〜〜にもないまま婚約に行き着いてしまう(笑)でも、本当の悟りっていうのは煩悩のど真ん中にあるんだよっていうヨーヘー君なりの悟りオチで、読み終わったときは「なるほどね」と思ったものだ。ヨーヘー君の煩悩っていうのは平たくいえば真朱さんであり、恋愛なのだけれども、それを「煩悩」と言ってしまうところがイイ。アタシ、「君は僕の煩悩だ」なんていわれた日には卒倒して結婚しちゃいそう(笑)

素直じゃない真朱さんを見ていると自分の性格をまんま見ているようで笑える。もーちょっと器用に生きてもいいんじゃないのー、って声をかけてあげたくなる。それは同時に自分に対して言いたいことでもあるのだけれど。