コクーン歌舞伎『三人吉三』

コクーン歌舞伎三人吉三』を見に行ってきました。5時半に会社を抜けるという勇気ある行為で無理矢理出かけました。上司と同僚の白く冷たい視線が…痛かった。でもね。毎日毎日必死で働いてるんだから、いいじゃん!?たまにはさあ!!劇場前で友人と待ち合わせ、いざ!

私ね、コクーン歌舞伎は初体験だったんですよー♪なのにいきなり平場席が当たってラッキーでした。席をとっぱらったところに段差の少ない桟敷を作って、そこに座布団を並べてありました。もちろん、お弁当だって食べられます!わーい、芝居小屋みたーい♪わくわく。早く幕が開かないかなあ♪

三人吉三』は因果応報がテーマになっていて、あまり明朗快活な時代的ではないんですよね。むしろドロドロした感じ。しかも兄弟分とはいえ、お坊とお嬢の関係は隠微だし、
十三郎とおとせは双子の兄妹と気づかぬままに肉体的関係を持ってしまうし。そもそもひとつの事件から派生した出来事が枝分かれして、もつれにもつれた物語。人の世のしがらみというものは、どんなに時代を経ても変わらないんだなあ。と、そんなことを思うのも、歌舞伎の醍醐味なわけで。

さてさて。いよいよお芝居が始まりますよ!お楽しみですよ!太郎右衛門に扮した勘三郎さんが、英語でセリフを披露。あ〜、来月はNY公演か。なかなか発音がお上手でした。肉襦袢でグルグルになった勘三郎さん、「オカネだいすき♪」なアキンド、太郎右衛門さん役では、おなじみの舌を突き出す「ボケ顔」も愛らしく、「オカネ!」というセリフの言い方ひとつで、どれほどカネに執着のある人物かということが直球で伝わってくるスバラシイ演技でした。あと、「しんこっく〜しんこっく〜!申告しよう〜」と歌いながら去っていく納税もれの自虐ネタがあり、これには会場中がどっと笑いました。

話が進むにつれ、平場席には、役者のみなさんが、席に乱入(笑)おかげで、七之助福助橋之助をかぶりつきで見ちゃいました。ぎゃ〜〜〜!ほら、アタシ、福助橋之助兄弟が大好きだから!!ぎゃ〜〜〜!ズデギ!はっしーはここ数年で急に貫禄が出てきましたねえ♪男っぷりがあがったですよ。今回はお嬢に福助、お坊に橋之助がキャスティングされていて、ただでさえ隠微な兄弟分の二人なのに、それを演じるのが本当の兄弟っていうのがこれまたマニア心をくすぐるじゃあありませんか。友人とふたり、お嬢とお坊が心中を図ろうとする場面で悶えてしまいました。許されるなら、あの席でゴロンゴロン転がりたいくらいでしたよ。ええ。

勘太郎七之助兄弟も、生き別れた双子の兄妹に扮し、あやしげな雰囲気を漂わせていました。しかもチュウ寸止めっ!!ギャー!私、勘太郎君の舞台を見るたびに、その演技力にただならぬものを感じるのですが、今回も然り。いつも決して派手な役がつくわけじゃないのに、ものすごく印象に残るんですよねー。今回は、お金をなくしてさまよい歩く姿が異様に艶っぽくて、ドキドキしてしまいました。あ、そうそう!アタシも10月13日生まれなんですよ!わーい、十三郎
とおとせと同じー♪

七之助君も、どことなく寂しげな、薄幸の女性を演じたら若手の中では抜きんでて良いですよね。私の中では、今のところ菊之助とタイです。今回の七之助君は、生まれついての寂しげな部分を持ちつつ、でもちゃっかりしっかりしている女性役で、見ている側としてはすごく楽しめました。特にお嬢と出会う場面は目の前で演じられていたこともあり、息づかいまで感じられて、どういう発声をしているのかとか、女性らしい仕草はどうしているのかとか、そんなところまでじっくり観察してしまいました。スゴイ迫力でした。これから中村2兄弟がどれほど活躍の場を広げていくか、楽しみです。

そうそう、衣装をじっくり見られたのもラッキーでした。私も友人もきもの好き。羽織の裏まで観察したもん(笑)お嬢の豪華絢爛な衣装は最高!あの緋色!いいなあ、ああいうの一度着てみたい…。

さて。クライマックスでは両壁を真っ白に、舞台の背景を灰色にして、雪が降りしきる中での大立ち回り。目の錯覚で、すごく奥行きがあるように見えました。しかも雪が私たちの頭上にも容赦なく降ってきたので、遠近感がまるっきりおかしくなってしまいました。お嬢が櫓に上っていくシーン、捕まるまいとして、必死で捕手を蹴落とすんですが、あの衣装であの立ち回り。格闘の末、結い上げた髪が乱れ、頭の一振りで髪がバサーッと解けるですよ。お嬢、ほんっとうに美しい!あまりの必死さに、涙を誘われる場面でした。お嬢のピンチにお坊がスライディングで助けに行く場面も「うぅっ」と来るところ。最後は三人ともに儚い世に別れを告げる…チョンチョンチョンチョンチョーン。

あっ!!かかかか、肝心の淡路屋さんこと笹やん(笹野高史さんね)のことを書いてないじゃないですか!笹やん見たさに釣りバカ日誌を見てしまう私としたことが。笹やん、すんごいかっこよかったですよ!いつものコメディ路線じゃなくて、ひたすらシブかっこいいの。今は改心してカタギになった元大悪党。数珠をぶっちぎった瞬間、修羅に落ちていく。きわめつけはお坊の鼻先をペロリとなめて小僧扱いするとこですかね。あれは見物でしたわ〜。唯一ギャグだったところは「わおーん、わんわん!」「うん、そうか!」って会話になってなかったトコですね。これもおかしかったー♪笹やんにラブ♪

あー、楽しかった!おもしろかった!コクーン歌舞伎って楽しい♪来年もぜひ見たいです。勘三郎さんをはじめ中村一門の方々は、これからもいろんなところでいろんな活躍をされるんでしょうね。今後もこっそり応援していきたいです。会社を抜けて見に行った甲斐がありました。帰りは友人とお茶。久しぶりに会ったので、話は尽きず。残念ながら時間切れとなり、またの機会にね、ということになりました。なにもかも楽しい夜でしたー!