剣 [DVD]4月末から始まった『市川雷蔵 変幻自在』特集@池袋新文芸座。昨日に続き、三隅研次監督による「剣三部作」の2作目『剣』を見てきました。

原作はワタクシの敬愛するみっしーこと三島由紀夫。彼が剣道に血道をあげていた頃に書かれた映画のための書き下ろし作品なので、まあ…思想的にまるで理解できない部分が多いというのが正直なところです。だってだって「俺は将来のことなんて煩雑なことを考えない。今を純粋に生きるんだ」って…えーっと…うーん…。でも、みっしー&雷蔵様のコラボレーション作品を見逃すわけにはいかなかったのですよ!

本作品は、『炎上』につづき、雷蔵様の学生服を拝める作品。モノクロ作品ですが、三隅研次監督作品らしく、顔に光がカーッと当たるときの役者の表情の撮りかたが絶妙です。今まで何度も言っていることですが、モノクロってカラー以上に雄弁に色を語るのですよね。この作品も然り。

作品の冒頭、薄暗い道場に、窓から差し込んでいた埃っぽい光。罰を与えられ、壁に向かって板の上で正座させられていた後輩たちの額に吹き出した汗。鈍く光る面と、その中で輝く目。

この作品は剣道を軸に、主将の国分(市川雷蔵)と、ライバルの賀川(川津祐介)が繰り広げる理想と挫折の物語。撮影当時、雷蔵様33歳、川津さん29歳。ふたりとも学生服なんかとっくに卒業しているはずなのに、ものすごく詰襟が似合うのよね。

私は雷蔵様見たさにこの映画を見に行ったのですが、川津さんがあまりに美しくてちょっとショックです…。だって雷蔵様より美しかったんだもの…。若い男性特有の肌艶とでもいうのでしょうか、張りがあって、水なんかガンガンはじいちゃいそう。

国分を誘惑したという恵理(藤由紀子)から詳しい話を聞くために、彼女のオープンカーに同乗する賀川。太陽を見上げる彼の瞳が光に透ける場面、ゾクゾクした!板の間に正座という罰を受けている最中は、真一文字に引き結んだ唇がセクシーでした。賀川は40分間、眉ひとつ動かさず、もくもくと正座を続けるんだけど、途中で何度も何度も歯を食いしばるのです。これまたセクシー。モノクロだと影がよく見えるので、細かい筋肉の動きがわかっちゃうのよねえ…。

って!国分(雷蔵様)のことは!?えーっとね…。度を越えた純粋さというのは、ときに滑稽に見えるのですよね。ガリ勉が笑いものになるのと同じ。剣道だけが人生。剣道だけが生きる喜び。剣道だけがお友達。愛だの恋だの、将来だの子供だの、なんと破廉恥な!!と言わんばかりの国分。まっすぐな棒が横からの衝撃に弱かったりするのと同じで、本当はものすごく弱いんですよね。だからこそ「なぜ皆は『俺のように』純粋に生きられないのだ!」という現実
に耐え切れず、自ら命を絶ってしまった。悲劇ではあるのだけれど、常人には理解できない思考回路に思わず苦笑してしまった作品でした。原作者の晩年を思うと、フクザツな気持ちのする作品でもあります。

剣道だけが生きる道、という主人公の話なので、延々と練習風景が続いたり、ランニングをしてみたり、腕立て伏せが続いたり。地味〜な場面が多かったです。それから、雷蔵様の腕立て伏せはちょっと曲げが足りないんじゃないかと思ったワタクシでした…。あと、国分の信奉者として登場する後輩の壬生(長谷川明夫)は、ざ・たっちに似てると思いました。

なんだかここまで書いたの読み返してみたら、あまりにもヒドい感想で、我ながらびっくりしています…。