女王蜂

市川崑監督の『女王蜂』をDVDでレンタル。近所にはちっさいレンタルビデオ屋しかないので、今後どうやってレンタルビデオ事情を改善していこうかどうか模索中。

石坂浩二の金田一耕介はやっぱりいいなあ。最近、ロン毛の石坂さん、『病院坂の首縊りの家』を撮影中なのでしょうか。

田舎の旧家。没落貴族。何畳あるんだかわかんない家。延々と続く縁側。巨大なふすま。飛び散る脳ミソ。時計台の歯車に巻き込まれて切断され、血とともに飛びちる死体の腕。冒頭から横溝ワールドにどっぷりとはまれるアートワークが素晴らしい。

旧家の家は日当りが悪いのが相場。すり硝子のむこうからさしこむ太陽の光が、ほのぐらい部屋の中を不気味に照らす。不気味にひきつる出演者の表情が、事件の陰惨さを煽る。

それにしても、この豪華なキャストはどう！？

石坂浩二 （金田一耕助）
高峰三枝子（東小路隆子）
司葉子（蔦代）
岸恵子（神尾秀子）
仲代達矢（大道寺銀造）
萩尾みどり（大道寺琴絵）
中井貴恵　（大道寺智子）
沖雅也 （多門連太郎）
加藤武 （等々力警部）
大滝秀治（加納弁護士）
神山繁（九十九龍馬）
小林昭二（小暮刑事）
伴淳三郎（山本巡査）
三木のり平（嵐三朝）
草笛光子（お富）
坂口良子（おあき）
白石加代子（速水るい）
石田信之（遊佐三郎）
常田富士男（農夫）

揃えようと思ったって、今こんな豪華なメンバーは集められないと思います。しかも、も、草笛光子みたいな大女優が、ほんのチョイ役、しかもチンドン屋、素顔がわかんないような姿で出演っていう扱いですよ。ぜいたく。

金田一登場シーン。農夫に扮した常田富士男が、リヤカーを引っ張って金田一耕介と会話を交わす。彼の声は、まんま「まんが日本むかしばなし」で、見る者全員の時代を一気に遡らせる。常田の使い方が絶妙かつ見事だとしか言いようがない。

仲代達矢と岸恵子の静かな演技。彼らの登場シーンは酸いも甘いも噛み分けた男女のそれで、秘めやかな色気が漂う。

書きたいことはいっぱい。でも、もう眠いからこのへんで。金田一シリーズでもこれは傑作のうちのひとつですね。今度は『獄門島』が見たいです。