松竹歌舞伎『勧進帳』 沼津公演

勧進帳

お盆なので帰省しております。つか、帰省するつもりはなかったんですが、松竹歌舞伎の地方巡業『勧進帳』の沼津公演チケットを取ってあったのを思い出したので帰省したのです。出演は松本幸四郎市川染五郎。パルコ歌舞伎でも活躍した市川高麗蔵松本錦吾も♪

こんな地方で染ちゃんに会えるなんて♪ウキウキしすぎてウッキッキー状態。まず最初に幸四郎の挨拶から。昨日は全国でもっとも暑かった浜松で『勧進帳』850回目の公演があったとか。今日は沼津で明日が立川だそうです。ひゃー…タフだなあ…。沼津といえば干物とすし。というお話をもりこんで会場のお年寄りの心をわしづかんだ後、いよいよ本公演の始まり始まり。

筋はあまりに有名なので省いて、と。今日は染ちゃんの富樫がいかにりりしく素敵だったかというところに全神経が集中してしまいました。富樫といえば、歌舞伎十八番の中でも助六に次ぐイケメン(←ぽぽん基準による)ですが、おそらくはあの烏帽子と浅葱色の衣装に拠るものが大きいと思われます。あれが似合うかどうか。爽やかに着こなせるかどうか。それだけで富樫のよしあしが決まってしまうのかもしれません。烏帽子に鉢巻って、ストイックでエロいよねー。ウフフ♪市川雷蔵の『忠臣蔵』で、松の廊下で刃傷に及ぶ浅野内匠頭のエロさに通じるものが。あ、よだれが…。

関所守の富樫、何も書いていない巻物を読み上げる弁慶の背後にまわり、巻物が本物かどうか確かめようと覗き込むシーン。この弁慶と富樫の攻防は「主人に対する情熱vs.与えられた職務を全うしようとする情熱」の戦いであり、おそらくは一番盛り上がるシーンなのではないかと。富樫の若々しさとりりしさが強く出ていないと、ビジュアル的にも強い弁慶と戦えない。そこんとこ、染ちゃんの富樫は良かった。腰をどっしりと据えた腰太な大人の色気。なのに爽やか。おまけに武士の情けというものをわきまえている富樫はイケメンなうえにナイスガイなのですね。男むさい中年の弁慶と好対照でした。

勧進帳といえば、弁慶によるラストの「飛び六方」。長瀬智也中村七之助の『真夜中の弥次さん喜多さん』で、長瀬智也扮する弥次さんがスキップができなくて(本人は上手なつもり)、喜多さんに「そのスキップはおかしい」と指摘される場面があるのですが、そのへたくそなスキップと「飛び六方」は似てます。弁慶が片足で「だっだっだっだっ」と義経を追うのです。これも勧進帳の楽しみのひとつかと。今日は幸四郎の飛び六方を堪能しました。

芝居を楽しんだというよりは、パーツを楽しんだ感のあった今日の公演。地方ではこうやって巡業しているんだなあ、こういう舞台設定にしてるんだなあ、ということもわかって大変勉強になりました。歌舞伎座もいいけど、地方で見る歌舞伎もなかなかオイシイ♪

今年の夏は歌舞伎座にいく予定がないので、今日は「ひと夏ぶん楽しんじゃえ!」と思って行きました。夏にふさわしい爽やかな演目で楽しかったです。染ちゃんの富樫、また見たいなあ♪

そうそう。幸四郎染五郎父子の弁慶と富樫の対決は、まるで『スターウォーズ』のダースベーダーとルークのようでした。芸ってこうやって受け継がれていくのねえ。来年あたり、染ちゃんの長男も舞台に立つのかな?それもまた楽しみです。父・子・孫の三代で舞台に立つ日もそう遠くはないでしょうねー♪

NHK からだであそぼ 決定版 歌舞伎たいそう いざやカブかん! [DVD]ところで、姉から聞いたのですが、NHKの「からだであそぼ」なる番組で、染ちゃんが体操のお兄さんまがいのことをしているとのこと。さっきアマゾンで探してみたら、あった!!明日の朝、やるかしらん…?早起きして見る予定(笑)