機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛

友人と『機動戦士ΖガンダムIII 星の鼓動は愛』を観にいってきました。エンディングがTVシリーズと違うことは最初からわかっていたことですが、そーきたか!という感じです。TVシリーズの哀しさとか理不尽さとかを描きつつ、ああいう終わり方をしてくれて本当に嬉しかった。


ブライト・ノアという人物は、ファーストガンダムから『閃光のハサウェイ』まで全てに登場していて、いわば語り部のような存在なのだけれど、ファーストでは19歳、Ζでは26歳。映画版の彼にはTVシリーズではあまり見られなかった余裕があるんですよね。ΖガンダムIIIではシンタとクムをあしらう彼の姿が必見と思います。19歳の頃の彼なら「子供はあっちへ行っていろ!」ってヒステリックに言っていたに違いない場面でも、26歳の彼は戦局が一番厳しい時でも「大丈夫だから」と微笑みさえ見せて超余裕の態度。ブライト、お父さんになったんだなあ…。しみじみ。若い頃から苦労の絶えない人物なのですが、そこがまたなんとも言えないんだな。

思えば、ガンダムで一番最初に好きになった人物はブライトでした。そのうちシャア様がナンバーワンになってしまったわけですが、ブライトはとても魅力的な人物だと思います。彼を中心にガンダムの世界を観ると一味違う楽しみ方ができると思います。Ζ完結編のブライトには大大大大大満足でした。

Ζに出てくる男女関係で私が一番好きなのはエマとヘンケンなんですよね。この二人、とても幸せになれたはずのカップルなのに。ラーディッシュのクルー、本当にいい奴らばっかし!ヘンケンとラーディッシュのクルーの固い絆が超泣ける…。「私、ヘンケン艦長が死ぬのを見たわ…」って、放心状態のエマが言うシーン、何度見ても号泣。思い出しただけで涙が出てきそう。

シャア様はシャア・アズナブルであることを全うしたという感じ。やっと進むべき道が見えてきたような気がしてきたというのに、ハマーン・カーンと再会したこと、パプテマス・シロッコという人物の思想に触れてしまったことで、自己存在の理由を再考せざるを得なくなってしまった=第二次ネオ・ジオン設立への明瞭な繋がりがわかりやすく描かれていたと思います。Ζのシャア様は最も人気のないシャア様なのですが、最も人間くさいという理由で私は大好きなのです。情けなくたっていいじゃん。どうしたらいいのかわからなくなってしまうことがあってもいいじゃん。ニュータイプのなりそこないだっていいじゃん。最後の最後まで「私という人間は何のために生まれてきたのか。シャア・アズナブルとしてどうすべきか」と思い悩む姿が彼という人物の真髄だもの。

ハマーン・カーンといえば、声優の榊原良子さん。この方の演技が素晴らしいなんてものではなく、迫力と威圧感、存在感において他の声優の追随を許さないというほどに凄まじかったのです。まさに凄烈。

で、パプテマス・シロッコ。彼がカミーユに討たれるシーン、すごくドラゴンボールっぽいと思うんですよ。鳥山明風というか。一緒に行った友人いわく、「男の目から見てもあいつカッコよすぎるから、ああいう顔で終わらせてプラマイゼロにしてるんじゃねーの?」だそうです。そうなのか…?違うだろう…。

で、カミーユ・ビダンカミーユ最高。彼こそシリーズ最強のニュータイプなんだと実感。シリーズの主人公の中で、人間として最もはっきりと成長を見せた人物でもあり、それゆえにTVシリーズでは悲劇の結末を迎えるわけなのですが、映画の完結編はもう。もうもうもう!ラストシーンは嬉しかった。泣けました。

ところで、○×□さんからの引用です。そう、本当にファが問答無用なのです。ラストシーンのカミーユとファの姿に、生きている者の力強さを感じました。

カミーユは死んだ女の子たちより抱きしめられる女の子を抱きしめ抱きしめられました。生き残った女の子の、あの抱きつきっぷり!咥え込んで二度と離さない気迫に満ちた様は圧巻で、実に神々しく、F91だろうがカミーユが駄目男だろうが問答無用なファ。貴女の勝ちだ。

ファーストでは戦場の外で、生身の人間と人間の触れあいがイコール人間関係になっていたですね。でもΖでは戦場における意識と意識がイコール人間関係になっており、よりニュータイプの世界を掘り下げた内容になっているんだなと今更気づきました。遅すぎ。私。

まだ観ていない方は、すぐにも劇場へ行くことをおすすめします。っていうか、今すぐ走って行ってください。感想は人それぞれ、ラストシーンの好き嫌いも人それぞれと思いますが、私は観にいって本当に良かったと思います。テレビシリーズではスキじゃなったカツやファに対する見方も変わりました。

ひとつ文句を言わせてもらえるなら、Ζの劇場版はシリーズを通してテーマ曲に失敗したと思います。ファーストの劇場版では絶妙のタイミングで挿入された井上大輔さんの歌がクライマックスを更に盛り上げていましたが、ΖのGacktは全然ダメ。不必要なノイズにしか聴こえなかった。それが悔しい。